同点の延長１０回。敬遠四球も含め、３つのフォアボールで１死満塁とした。ここで代打で登場した。初球、高宮の外角スライダーを空振りすると「ちょっと強引にいきすぎてしまった。力が入ってしまった。そのあとは、いつも通りに戻れたかな」。フルカウントからの６球目、内角真っすぐを見逃した。ボール―。ポストシーズンで初となる押し出しでのサヨナラ勝ちに、東京Ｄは揺れた。
　昨年８月末に右手中指を脱臼、９月上旬に手術し、阪神とのＣＳ最終Ｓを欠場した。毎晩テレビ観戦し、翌日はＧ球場で報道陣と試合を振り返るのが日課だった。「勢いがついてしまったな」と４連敗した短期決戦の怖さを痛感。屈辱から１年がたち、まずはリベンジへの第一歩を踏み出した。「負ければ崖っ縁。初戦を取れたことは大きい。（リベンジ？）そういう思いが、粘って勝てた要因じゃないかと思います」

　１０回１死一、二塁、亀井の打席では、ネクストにアンダーソンが待機していた。原監督が舞台裏を明かす。「２ウェーだね。２死になったらアンダーソンでいこうと思った。１死で塁が詰まったら、やっぱり由伸だ、と」。亀井が歩いて満塁。今季、代打で打率３割９分５厘を誇り、選球眼も良く、外野フライを打てる技術も秀でた由伸に託した。
　試合後の会見で指揮官は「内容はともかくとして、まず、先勝できたことが大きいね」と興奮気味に振り返った。だが、すぐにこう指摘した。「もう少し、３番、４番がねえ。しっかりと本来の打撃をしてくれたら」。同点とされた直後の７回１死二塁で坂本が空振り三振、阿部が一ゴロに倒れるなど、２人で計９打数無安打。坂本は３度の得点機でいずれも結果が出なかった。
　レギュラーシーズン同様、打線が機能したとはいえない。最終Ｓへ王手をかけたが、目標はあくまで日本一奪回。原監督は「点数はいつも通りの気がする。まだ、できるね」と尻を叩いた。

　２点を追う９回１死に代打で出場。大歓声の中、打席に立つと、福原から中越えの二塁打。最後まで食らいついた。「抜けてくれて良かった」

　巨人が、来季の新監督として、高橋由伸外野手兼任コーチ（４０）を軸に検討していることが１９日、分かった。近日中に打診する模様だ。球団は、１７日にＣＳ最終ステージでヤクルトに敗退後、原辰徳監督（５７）の辞意表明を受け、後任探しに着手。原野球を継承し、新しい風を吹き込める人材として白羽の矢を立てた。この日、東京・大手町の読売新聞東京本社内で原監督の勇退が正式に決定した。
　長期化が予想された新監督人事が、急速に動いた。球団は１７日にヤクルトに敗退後、原監督が球団側に辞意を伝えたため、水面下で後任候補の調査に乗り出していた。複数の候補者をリストアップしていたが、この日までに高橋由を最上位に挙げた。近日中にも本人と接触し、打診する方針を固めたとみられる。
　この日、原監督の勇退会見に同席した白石オーナーは、新監督の条件として「新しい風を吹き込んでくれる人。原野球を継承し、発展させるという強い意志と、努力で実行してくれる人」と語り「ファンのみなさんも納得する、この人ならという形で決めたい」と続けた。その条件に合致するのが高橋由だった。

　高橋由は、０２年の原監督の第１次政権から通算１２年間、原野球の中心選手として活躍した。指揮官の「実力至上主義」を肌で感じ、セオリーにとらわれない柔軟な采配を、間近に見ていた。近年は代打での出場が多くなったが、ファンの声援は、チームで一番の人気を誇った。原監督のカリスマ性を引き継げる数少ない生え抜きスターでもある。
　今季から兼任コーチとして、指導者修業をスタート。試合前後のコーチミーティングに参加し、グラウンド上では積極的に打撃指導も行った。若手からの人望も厚い。今年１月には白石オーナーが「将来の指導者の一角」と話すなど、監督候補としての期待は高まっていた。
　だが、本人は来季も現役を続行する意向で、自主トレ先の検討も始めているという。今季、代打では通算３８打数１５安打、打率３割９分５厘をマーク。来季へ向け、さらなる飛躍を目指している段階だ。球団は現役を引退し、監督に専任してもらいたい意向を持っているだけに、交渉には時間がかかる可能性もある。

　原監督は日本一３度、３連覇２度を含むリーグ優勝７度、今季は２位と、抜群の実績を残した。白石オーナーは「すぐに新監督に結果を出せというのは無理がある。しかし、この際、思い切ってギアチェンジするわけだから、自分の指導力で、率先してチームを引っ張ってもらいたい」と、強いリーダーシップを求めた。球団は誠心誠意、説得していく方針だ。
　◆高橋　由伸（たかはし・よしのぶ）１９７５年４月３日、千葉県生まれ。４０歳。桐蔭学園、慶大を経て９７年、巨人を逆指名してドラフト１位で入団。９８年から６年連続ゴールデン・グラブ賞。２００４年アテネ五輪出場。１５年は選手兼任打撃コーチを務めた。通算成績は１８１９試合、１７５３安打、打率２割９分１厘、３２１本塁打、９８６打点。１８０センチ、８７キロ。右投左打。今季年俸は１億５０００万円。

　巨人・桃井恒和球団会長（６８）が２０日、次期監督の最上位候補が高橋由伸外野手兼任コーチ（４０）であることを認め、交渉に乗り出す意向を明らかにした。この日午前中に取材に応じ「よそ見はできない。こちらが決断した以上は速やかに動こうと思う」と、話した。球団は、高橋由にこの日午後にも監督就任の打診を行う方針だ。
　巨人は原辰徳前監督（５７）の勇退を受け、水面下で後任の選定に乗り出し、複数の候補の中から高橋由を軸に検討に入っていた。
　チームは１１月上旬から宮崎で秋季キャンプを行う予定だが、桃井会長は「できればキャンプは新体制できっちり行きたい。それまでに返事をもらえるかどうか。向こう（高橋由）も突然自分と言われてビックリしているだろうし、交渉は１回では済まないと思う」との見通しを示した。

　巨人の高橋由伸外野手（４０）が２０日、都内のホテルで堤ＧＭ、久保球団社長と会談し、正式に来季の監督就任を要請された。
　明確な返答はしなかったが、交渉後、高橋由は無数のカメラのフラッシュを浴びながら報道陣の取材に応じた。
　「来季、監督を、という要請を受けました。一部報道では名前が挙がっていましたので。ただ実際、今回、本当に伝えられて。自分としては先日、神宮で（ヤクルトとのＣＳ最終ステージに）負けた後、来季に向けて選手として気持ちを切り替えていたところだったので、戸惑いまではないですが、本当に僕のところにきたんだなという感じです。具体的にというところではまだはっきり答えは出せていない。お答えしていないですが、受けるということになれば兼任はないのかなと思っています。両立は難しいのかなと思っています」と語った。

　球団の熱意は感じたか？　との質問には「まだ僕が引退したわけでもないですし、ただ球団としてもいろいろなものがあってのことなのかなとは思います」と話し、「今日の午前中、球団から連絡があってそこから数時間しかたっていない。少し時間をいただけるということなので、しっかり自分の中で考えて１日も早く答えを出したい。決して後ろ向きな話ではないですし、大変光栄。選手としてなのか、監督としてなのか分からないですが、ファンの皆様の期待に応えられるようにしたい」と終始、引き締まった表情で話した。

　巨人の久保博球団社長（６６）が２０日、都内のホテルで高橋由への監督就任要請を行った後、報道陣の取材に応じ、前向きな返答を熱望した。
　主な一問一答は以下の通り
　―今日はどのような話を。
　「だいぶ緊張されていましたので、少し時間をくださいということだった。今日はお願いだけ。これからまた何度か話をすると思います」
　―原監督の退任会見翌日にオファー。スピーディーな動きの理由は。
　「原監督もおっしゃっていましたが、新陳代謝ということと、オーナーも言っていたように新しい風、というところ。やっぱり打ち勝つチームを作らないといけない。そういう意味でいろいろ検討した結果、高橋選手が最適だと考えた」
　―高橋由はまだ現役選手。引退はしていない。
　「彼も選手としてやっていこうと思っていたと思うので、悩んでおられると思う。ジャイアンツの監督というのは選手兼任というのは難しいのでは、と球団としては考えている」
　―少し時間を、ということだが、返答の期限はいつまでか。
　「もう、来季に向けて始まっている。１１月７日から秋季キャンプが始まるので、遅くともそこまでには前向きな回答をいただければと思っている」