巨人がソフトバンクとの頂上決戦に敗れ、交流戦５年ぶりの優勝を逃した。エース菅野が先頭打者弾を浴びるなど大乱調。７年目で自己最短となる１回０／３、４失点で降板した。打線は相手先発・和田ら５投手の前に、岡本のソロによる１点に封じられた。交流戦を１１勝７敗で終えてセ首位の巨人は、２９日のヤクルト戦（秋田）からリーグ戦を再開する。ソフトバンクは最多８度目の交流戦Ｖとなった。
　試合終了直後、菅野はベンチからすぐに立たず、ソフトバンクナインが歓喜するグラウンド上を見つめていた。勝った方が優勝という大一番に先発し、自己最短の１回０／３４３球、３安打４失点で降板。「こういう機会を作ってくれたチームメートだったり、ファンの方に申し訳ないです」と敗戦の責任を背負った。
　初回は福田に先頭打者本塁打を浴びた後、２四球で１死一、二塁。「あそこで四球、四球じゃ話にならないです」と猛省した。１死満塁から松田宣の三遊間適時内野安打で、坂本勇が「判断ミスです」と自分を責めた三塁悪送球もあり２者生還。なおも一、三塁から甲斐のセーフティースクイズで４点目を失い、２回先頭の９番・和田に四球を出して交代となった。

　「しっかり受け止めて、何とか打開していかないといけないです」と菅野。これまで何度もチームを救ってきたエースと主将で負けたのだから仕方ない。切り替えて前に進むだけだ。

　ソフトバンクとの大一番を自宅でテレビ観戦した長嶋茂雄終身名誉監督（８３）＝報知新聞社客員＝が「勝つ勝つ勝〜つ！」で菅野を２回に降板させた意味を語った。

　巨人の最終目標はペナント奪回であり、その先に日本一がある。勝てば５年ぶりの交流戦Ｖとなった大一番だったが、原監督は先も見据えた柔軟な采配をした。２回、先頭の和田に四球を与え、菅野に交代を命じた。この決断には、いろいろな意味を感じた。
　初回、いきなり４点を失った。福田の先頭弾は真ん中付近に入り、２番の上林には四球を出した。制球に苦しみ、流れを食い止められなかった。「何で思い通りに投げられないんだ…」と、現状の自分にいら立っているようにも見えた。５月１５日の阪神戦（東京Ｄ）では６回途中１０失点。ここ最近はずっと、本来の姿になかった。プライドは高く、責任感も人一倍強い投手だから逆に、精神的なつらさは想像以上のはずだ。

　菅野以上の中継ぎ投手など、いるはずもない。調子が悪くても、エースが続投した方が失点する確率は低いだろう。でも、原監督はその先を見た。心の疲れを早く癒やさないとリーグ戦再開後にも影響してしまう、と。投手の和田に四球を与えてしまうほどダメージは深く、心は限界だった。試合のない２４日からの５日間で何とか身も心も洗い流してほしい。原監督が会見で何を言うかは分からないが、これが本音だと思う。
　確実なことは一つ。菅野が復調しない限り、巨人の優勝はない。絶対条件だ。パ・リーグ６球団との戦いを終え、やはり中継ぎ陣への不安は拭えていないが、それでも戦えた事実は残った。坂本勇と丸に、岡本も加えた攻撃力は１２球団でも随一だった。王者ソフトバンクとも大した差はなく、十分に超えられる範囲。だから、柱を失うことだけは避けないといけない。
　坂本勇にも疲れは見える。開幕からセ・リーグ新記録となる３６試合連続出塁を達成するなど、全力で引っ張ってきたのだから当然だ。最近打ててないが、技術面に問題はない。菅野とともに、まずはリフレッシュし、再スタートを切ってほしい。今日の敗戦はリーグ優勝することで報われるだろう。

先頭打者に本塁打。それで四球、四球。リズムもへったくれもあったもんじゃない。みんなで積み上げて優勝戦に持ち込んだのに、一人の選手だけに任せるわけにはいかない

　試合後、巨人の原監督が怒りをにじませたのは、エースの背信投球についてである。
　２３日のソフトバンク戦。勝ったチームが優勝という大一番に先発した菅野智之（２９）が、福田に先頭打者本塁打を浴びるなど、いきなり４失点。二回に９番打者の投手・和田に四球を与えたところでマウンドから降ろされた。１回３分の０を投げて４３球。３安打３四球４失点でプロ最短ＫＯとなった。
　原監督は前日の試合に勝利した後、「明日は甲子園決勝の心境で戦おう。選手、チームの技、力の見せどころ」と語っていたが、そんな大事な「決勝」のマウンドを託されたエースが大炎上。「見ての通り。チームメート、ファンに申し訳ない」とうなだれるしかなかった。
　菅野は先月１５日の阪神戦で１０失点を喫し、同２１日に腰の違和感のため、登録抹消。復帰後は２連勝していた。前回登板の日本ハム戦は７回６安打３失点で７勝目（３敗）。この時、宮本投手総合コーチは「『エース復活』でいいんじゃないですか」と手放しの喜びようだった。
　ＯＢで元巨人投手コーチの高橋善正氏（評論家）がこう言う。

勝った前回の登板にしても、直球の精度が本来のものではありませんでした。日本ハム打線に初回だけで５安打を集中され、３失点とつかまった。この日も先頭打者本塁打された球は、外寄りの甘い直球で捕手の構えとは逆球。得意のスライダーやカットボールも明らかなボール球ばかりだった。精度もさることながら、まだ腰に違和感が残っているのか、下半身が使えていないから棒球が多い。今年の菅野の球はキレがないため、相手打者が芯で捉えやすく、簡単にスタンドまで運ばれる。前回は逆転してもらった中盤から、悪いなりに修正していたが、あれで投手コーチが『完全復活』と言うのは理解できない。好調時とのギャップに苦しむ菅野本人との間に温度差が生じている。この日の投球を見て、何も解決していないと感じました

　首脳陣は菅野に全てを任せている。抹消当初は最短１０日間での復帰を目指したが、結局、一軍昇格まで１９日間を要した。復帰時期も本人が決めたという。
「腰の違和感はまだ残っているようです。それでもエースという立場上、いつまでも休んではいられない、多少違和感が残っていても、付き合いながら投げるしかない、と菅野自身がゴーサインを出した。今でも入念にマッサージをするなど痛みを和らげながら登板している。基本的に投手コーチは、菅野が決めたことを尊重するだけですから」（チーム関係者）
　この日浴びた本塁打は、リーグワーストの１５本目。菅野は離脱前、「本塁打を打たれないために？　結局、低めに集めるしかないと思う」と首をひねった。が、宮本コーチはこの時、「被本塁打？　勝っているからいいんじゃないですか。エースなんだから我々が気にすることじゃない」と話していた。首脳陣はどこまでも本人任せなのだ。

エースに全幅の信頼を置いていると言えば聞こえはいいが、就任１年目のコーチがエースにモノを言えないだけでは、と感じてしまいます。菅野は自身の体が１００％動かないことにいら立っているようでもある。今の状態なら、もう一度抹消して心も体も手入れした方が先々のためになると思います