084 三年近く前、泉の広場のところで、ヘンな女がうろついていた。 通勤の帰りによく見かけた。 三十前後で、赤い色のデザイン古そなドレスっぽい服着てて、小柄で、顔色悪く目がうつろ。 髪は背中近くまであって、伸ばしっぱなしに見えた。 目立つ服の色となんか独特の雰囲気があって目がいってしまう。 でも怖い(キ印っぽい)感じして、何気なく観察はしても目はあわせんようにしてた。 女はいつも広場の中をうろうろしてた。 地下出口出たとこの何本か外れた飲み屋筋に 立ちんぼのねーちゃんの多い場所があって、そこのねーちゃんかな?と思ってた。 匿名さん2015/06/19 00:12
085 ある日の仕事帰り、広場内の薬局の店頭で コスメの安売り見てた。私は買い物するの時間かけるほうで、 そん時も多分一時間近く店にいたと思う。 その夜も女は広場をうろついていて、いつものことなんで特に気にとめてなかった。 でも、店から出た時、視線感じて顔上げると、広場の真ん中の噴水を隔てて、女がこっち見てた。 なんかヘンな感じがした。私は目が悪くて、眼鏡かけてても 少し離れた場所だと相手の顔とかよく見えないのに、 女は妙にくっきり見えたんよ。3Dみたく。 匿名さん2015/06/19 00:14
086 目があった途端、気持ち悪くなった。 何か本能的に怖くて。 自分でも思考回路謎のまま、それでも反射的に 店内に戻ろうとしたけど、金縛りかかったみたいに身体が動かん。 助け求めようとして声すら出ないことに気付いた。 いつもふらふら歩いてるはずの女が、すっと素早く近寄ってくる。 明らかに普通じゃない様子で、髪振り乱してドレスの裾ゆらしてこっち来るのに、誰も気付いてくれない。 もの凄い顔で笑ってて、その表情の怖さにふーっと気が遠くなった。 だって、目のあるとこ、全部黒目にかわってるんやで。 怖い、もうあかんって思ったときに、いきなり誰かが後ろからぎゅっと腕を掴んできた。 匿名さん2015/06/19 00:16
087 驚いて顔上げる(ここで身体の自由が戻った)と、男の人で、 話しかけようとしたら「静かにして」って小声で注意された。 呆然として顔見上げてると、男の人はますます手をぎゅーっと握ってきて、怖い顔で前を見てる。 吊られて視線戻したら、女がすぐそばに立ってて、男の人を呪い殺しそうな目つきで睨んでた。 すごい陰惨な顔してて、怖くて横で震えてたけど、 女はもううちのことは眼中にない感じで、 「…………殺す……」 って、つぶやいて、男の人の横をぶつかるみたいに通りすぎて店内に入ってった。 男の人はその後、私をぐいぐい引いて、駅構内までくると、やっと手を離してくれた。 匿名さん2015/06/19 00:17
089 駅が賑やかで、さっきあったことが信じられんで呆然としてると、 「大丈夫か?」って声かけてきたんで、頷いたけど、 本当はかなりパニクってたと思う。相手の名前聞いたりとか、 助けてもらった?のにお礼言うとか、まともにできなかった。 男の人は改札まで見送ってくれた。 別れ際に、「もうあそこ通ったらあかん」 とか言われて、 「でも仕事あるし」 「命惜しかったらやめとけ」 答えようがなくて黙ってると、 「今日は運よかったんや。あんたの守護さんが俺を呼んで あんたを守ってくれたんやで」 「………………」 「たまたまやねん。わかるか? あんたが助かったの、たまたま守護さんがわかるもんが、 たまたまそばにおった、それだけやで。あいつにとり殺されたくなかったら、もう通らんとき」 匿名さん2015/06/19 00:19
090 霊なんて見たことなかったから、自分の体験したのが何なのか わからなかった。(正直、今もわからない) 女はどう見ても生身の人間に見えた。 それで返答に困ってると、その人は私に何度も一人で通るなよと繰り返して、行ってしまった。 未だにアレが何だったのかわからない。 私は二ヶ月後、そこの仕事場辞めたけど、その間夜は泉の広場は一度も通らなかった。 男の人も、女も共に謎。 男の人の名前、聞いて置けばよかった。 助けてくれたんなら(今も半信半疑だけど)お礼言いたかった。 反面、かつがれたんかな?と思わなくもない。(でも目的は何さ?) すっきりしない。 怖い目にあった次の日、性凝りもなく泉の広場を通ろうとしたのな。 匿名さん2015/06/19 00:20