323 「生き霊2」 私の父はもう他界しているのですが、生前の父は決して心霊現象とか、非科学的なことに肯定的な人ではありませんでした。 そんな父がひとつだけ、どうしても腑に落ちないと長年言い続けていた体験談があります…。 それは、今からもう30年以上前のことになるのですが、父はY県のK市というところの出身で、私が住む地域からはかなり離れた土地の出身でした。それでも父は年に一度は帰省して、まだ地元に残る親兄弟の元に顔を出していました。 そんな中、祖父が重い病に罹り、長期の入院を余儀なくされることになり、一年ほどの闘病の末、祖父は亡くなってしまったのですが、他界するまで祖母や兄弟をサポートするため、父は足繁く実家に通っていました。そして、いよいよ祖父の病状が悪化して、存命の祖父と最後の面会になるだろうと、帰省した際に体験した不思議な話です。 つづく 主2021/07/02 23:324FkqoEEBMI
324 323つづき 父の実家がある町は、古くからの風習がまだ残るような田舎町で、近所の付き合いや繋がりも都市部より深く、幼なじみがまだその町に多数住んでいるような環境でした。 そして、父が祖父を見舞い、病院からの帰り道に、幼なじみの一人に偶然出くわしました。 父が私の叔父にあたる父の末弟と、細い田んぼ道を歩いていると、百メートルほど前方から、男が歩いてくるのが見えたのですが、遠目からすぐにそれが幼なじみのAという人だと、すぐに分かったそうです。Aは常に野球帽を被っているのがトレードマークで、その時も野球帽をかぶっていたので、父が末弟に「あれ、こっち向かってくるの、Aだよな?」こういう時「そうだね、Aだ。ここんとこずっと見てなかったけどね。」こう話していると、すれ違う距離までAが近づいて来ました。 つづく 主2021/07/02 23:484FkqoEEBMI
325 324つづき しかし、近づけば近づくほど、そのAの姿には生気がなく、がっくりとうなだれた感じで顔色も悪く、声を掛けようと思っていたのに、そのあまりの姿に、父はとうとう声をかけることが出来なかったそうです。 ただ、すれ違った際に振り返ってAを再度見たら、Aもこちらを振り返って見ていたのだそうです。 再度父が弟に「あれ、Aだよな?」弟は「間違いないよ。しかし、ひどい落ち込んでる様子だったね。」こんなやり取りがあったそうですが、そのまま帰宅し、そのことは忘れて父は実家を後にしました。 それから、数ヶ月が経ち、とうとう祖父が他界してしまい、葬儀のため再度帰省したときに、父は不思議な事実を耳にすることになります。 後日につづく 主2021/07/02 23:574FkqoEEBMI